『ガメラ監督日記』

 “The Days of GAMERA”

金子修介 著

株式会社小学館 発行

定価 1,400円+消費税

ISBN 4-09-387242-2

 

 

装丁・写真構成 樋口真嗣

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本文より……

『G1』
●ゴジラの仇ガメラ

 大映の人から初めて「ガメラ」の話をされたのは92年(平成4年)の夏頃のことであったと思う。第1作「大怪獣空中決戦」が完成して公開されたのは95年の3月だから、その3年近く前のことだ。
 新宿の喫茶店で待ち合わせ、軽い世間話の後、「実は、ガメラを復活させようというプロジェクトがあるんですよ」と、切り出された。
 その人は当時、企画部員で、現在は大映を辞めて脚本家になり、5年後の97年『恋と花火と観覧車』でついに監督にもなった砂本量 氏である。まさか、脱サラするとは思えないような、会社の仕事を忠実にこなすタイプに、一見したところ見える人である。
 砂本氏はいつもの穏やかな口調の中に、いい話を持ってきた自負心をにじませた。ところが大映と砂本氏には失礼な話だが、僕はその時、「これは、実現性が薄い企画だな」という気がしてしまった。
 話は一見画白そうだが、結局はまとまらないで流れてしまう映画が巷にはたくさんある。これは、そのうちの一本ではないか、という気がした。
 確かにガメラは大映の財産ともいえる古いキャラクターで、大映以外にどこがやるんだ、と言ったら、大映がやるしかないわけだが、果 たしてこの企画でお堅いイメージの会社がまとまるのだろうか? という疑問が先ず最初に浮かんだのである。
 怪獣映画のような「イロもの」と取られかねない企画、しかも、金はかかるであろう企画が、すんなり通 るとは思えない。『ガメラ』を2本撮った今、大映は結構柔軟で良心的、優秀な人が集まった面 白い会社であるとわかったが、そのころ僕が勝手に描いていた「大映」という会社のイメージは、『敦煌』に代表されるように、NHK大河ドラマ的というか、文芸大作なら全社挙げて製作態勢をとったとしても、怪獣映画などには全社一丸というわけにはならないのではないか、というものだった。
 中国ロケの文芸大作をやるんだ、と言われたら、実現可能だとすぐに思ったろう。だが、ガメラは……
『G2』
●G2に再結集

「次もやるぞ」と前のめりになっていた僕は、なかなか『2』正式決定の報がないので、多少やきもきしていた。
 舞台挨拶で、
「浅黄の最後の言葉、ガメラはきっと来るよ、を結びの言葉としたいと思います」
 なんて、『2』を匂わす発言もしていたし、徳間社長からも『2』をやろう、と言われていた。
 が、いつやるかという会社としての正式な決定がない。こういう時、監督は素浪人気分である。こちらがやりたいと思っていても、この種の映画は相手があってのことだからである。
 世の中はオウム事件で騒然となっており、数年前からの経緯に無頓着だった僕は、渋谷で変な歌を歌っていたあのオウム教団が、凶悪なサリン事件なんか起こせるのだろうか、と首を傾げ、攻撃するマスコミのほうが異常に感じられ、毎日、何だかそのことで憂鬱だった。あの連中とは何の関係もないのに。
 都内大警戒の日には警官に職質され、「俺ってそんなに怪しいのかよ」と思った。
 そんな毎日があって、やきもきの気持ちも次第に薄れ、今、何も決定がないということは『ガメラ2』は、もし実現したとしても、だいぶ先のことになるかなと思っていると、突然、再結集の召集があったのである。
 大映は、翌96年夏公開の映画として製作したい、とのことである。……決まれば決まったで急ぐ話である。もっと早く決まってくれればいいのになあと思ったが、成績が5億と微妙な線だったから、会社が悩むのも無理はない。
 まあ、やるからには早くエンジンかけなければ、と気持ちを即座に奮い立たせた。勢いのあるうちに連打連打である!
 今回は「子供の味方」という言葉はまったく出なかった。
 逆に、プロデューサーとして参加することになった大映の佐藤直樹氏から、
「洋画大作に対抗出来るような作品を目指したい」
 という言葉があった。これはこれで、また、凄い目標である。予算は変わらないわけだから。『1』では4千万の予算オーバーがあり、製作費は6億を超えてしまったが、『2』はそのオーバー分は最初の予算に組み込まれている。これをさらにオーバーするようなことは許されない。
 今回は、最初から打ち合わせに参加した樋口氏は、「雪の中に立つガメラが見えます」なんて、お告げのようなことを言い、その理由からだけではないが、『1』の九州地方とは対照的に、北のほうから始まる話にしよう、ということがすんなり決まった。……